歯科医院への通院が難しい方へ
病気、身体的な制限などにより、歯科医院へ通院することが難しい方のために「訪問歯科診療」を行っています。
訪問歯科では、歯科医師や歯科衛生士がご自宅や介護施設に伺い、むし歯治療や歯周病治療、入れ歯の作製・調整などを行います。
当院では、院内とほぼ同等の治療を提供できるよう、持ち運び可能な「ポータブルユニット」や「ポータブル歯科用レントゲン」などの専用機器を完備しています。
これにより、院内で受ける治療と同様に行うことが可能です。
訪問歯科を利用できる条件の例
- 歯科医院への通院が難しい方(高齢者、認知症や精神疾患を抱えている方など)
- 自宅や施設までの距離が半径16km以内
- 介護施設入居者
日本摂食嚥下リハビリテーション学会
認定士在籍
当院では、日本摂食嚥下リハビリテーション学会「認定士」の資格を有する歯科医師がご自宅や介護施設へ伺い、専門性の高い訪問歯科診療を行っています。
通院が困難な高齢者や障がいをお持ちの方にも、安心して質の高い口腔ケアを受けていただける環境づくりを大切にしています。
「日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士」は、摂食・嚥下障害に関する専門的な知識と技術を修得したことを証明する資格です。
訪問歯科で行うリハビリの内容
口腔周囲の機能訓練(間接訓練)
食事を伴わないリハビリで、口や舌、喉の筋肉を鍛えて嚥下機能の回復を目指します。唇や舌を動かす体操、舌の持ち上げや前後運動のトレーニング、「あ・い・う・え・お」と発音して喉や口の筋肉を鍛える発声練習などを行います。
これらの訓練により、食べ物を飲み込みやすくし、誤嚥やむせを防ぐことが期待できます。
嚥下訓練(直接訓練)
実際の食べ物や飲み物を使い、食事の姿勢や食形態(刻み食・とろみ食など)の調整、飲み込みのタイミングなどを練習します。
安全に食事をとるための動作を身につけ、日常生活の質(QOL)向上をサポートします。
お口のケアを怠ることで
起きやすい問題
寝たきりの方や介護を受けている方の多くは、自分で十分にお口のケアを行うことが難しい状況にあります。
ご家族や介護スタッフの方も、日々の全身ケアに追われる中で、口腔ケアまで手が回らないことも少なくありません。
しかし、口の中を清潔に保てない状態が続くと、むし歯や歯周病だけでなく、全身の健康に深刻な影響を及ぼすことがあります。以下では、特に注意が必要な代表的なトラブルを紹介します。
摂食嚥下障害
「摂食嚥下」とは、食べ物を噛み砕き、飲み込んで胃へ送り込む一連の動作を指します。
摂食嚥下障害は、この機能がうまく働かなくなる状態で、食事の際に口を開けづらい、むせる、咳き込む、うまく飲み込めない、食後に声がかすれるといった症状が見られます。
これを放置すると、食事量の低下や脱水、栄養不足を引き起こすだけでなく、窒息や誤嚥性肺炎のリスクも高まります。
早期のリハビリや専門的な治療により、改善できるケースも多いため、違和感を感じた時点で早めの対応が大切です。
誤嚥性肺炎
誤嚥とは、本来食道に送られるべき食べ物や飲み物が誤って気管や肺に入ってしまうことをいいます。
特に高齢者の場合、咳反射や嚥下反射の低下によって誤嚥が起こりやすくなります。お口の中の細菌が一緒に肺へ入り込むと、肺の中で繁殖し、誤嚥性肺炎を引き起こすことがあります。
これは高齢者にとって命に関わることもあり、注意が必要です。咳き込みや発熱、息苦しさなどの症状が見られる場合は、すぐに医療機関へ相談してください。
ご家族の方へ
介護を受けている方の中には、脳血管疾患・心疾患・糖尿病・肺炎・認知症といった症状を抱えている方が少なくありません。
これらの疾患は、実は「歯の喪失」や「歯周病」と深い関係があることがわかっています。
お口の健康は、全身の健康と密接につながっており、「しっかり咬むこと」が健康維持の大きな鍵となります。
しっかり咬める入れ歯を装着することで、食事をしやすくなり、栄養を効率よく摂取できるようになります。さらに、食事にかかる時間が短くなることで体力的な負担も軽減され、生活の質(QOL)の向上にもつながります。
このように、お口のケアは単に歯の問題にとどまらず、全身の健康を支える大切な要素です。歯を守ることは、体の健康を守ることにもつながります。ご家族の中で、通院が難しい方や入れ歯に不具合を感じている方がいらっしゃいましたら、どうぞお気軽に当院の訪問歯科へご相談ください。